ダンサーの足も火のようにほてる
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1.[K] それほど疲れるのだが、しかし、大声で話ができるのはこの部屋だけだ。ことに今夜は茉莉の事件もある。シュミーズを頭にかぶったまま、喋っているダンサーもいた。 しかし、陽子はいつものように黙っていた。澄ましてるよと、言われてから、一層仲間入りをしなくなっていた。 黙々とコバルト色の無地のワンピースを着て、衿のボタン代りに丸紐をボウ(蝶結び)に結んでいると、上海帰りのルミが、 「殺生やわ、ほんまに……」と、遅れて上って来て、ペラペラひとり喋った。 「――今夜はパトロン、あしたは二時まで寝たる積りやのに、マネージャーの使いか。茉莉が倒れたとこ写した男いたんやテなア。朝のうちにその写真貰って来い、発表されたら困る、ルミの心臓で行って来てくれ。ダンサーを使うのん屁とも思てへん。マネージャーの方がよっぽど心臓や」 陽子は何思ったのか、ルミの傍へ寄って行って、 「あたし、代りにあした行ってあげてもいいわよ」 と、ルミがマネージャーの机から貰って来た木崎の名刺を、覗きこんだ。三条河原町の元京宝劇場は、占領軍専用の映画が掛り土曜日の夜はジープとトラックが並んだ。 木崎が十番館を出て河原町通りまで来た時は、丁度その劇場のハネで、夜空に点滅する―― 「KYOTO THEATRE」 のピンクの電飾文字のまわりを囲って、ぐるぐる廻る橙色の点滅燈のテンポが、にわかにいきいきとして、劇場から溢れでる米兵の足も速かったが、木崎の足はソワソワと速かった。 昂奮していたのだ。なぜだろう……。 レンズが肉体に化した木崎の写真は、印画紙からニヒリズムの体臭が漂うくらい、個性が強く、彼のねらう構図にはつねに夜が感じられて、ふとデカダンめいたが、今夜の陽子と茉莉の写真も「夜のポーズ」という彼の好みのテエマにふさわしかった。 <a href="http://seo-blog.jp/">SEO対策 ブログ</a> 05/26 14:28 PC PC
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