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混乱して右往左往している人たち
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僕は次々にぶつかった。ぶつかって、はね返した。はね返してはすり抜けた。すり抜けて、突き飛ばした。そのたびに、警官ではない普通の大人たちが、何人も僕をにらみつけたり、後ろから罵声を浴びせかけた。
『大勢の人が見ている前で、その大勢の人たちが普通正しいと考えるようなこととはかけ離れた、とてもおかしなことをしながら、それでも自分を失わないでいられる?』
僕は必死だった。必死に走った。はるか前方に見え隠れする「火」になんとかして近づく。そのためには『大勢の人たち』のことなんかかまってはいられなかった。
『自分の思った通りに、感じたままに動けばそれでいい。入口はそこにあるから。そこがトンネルだろうと橋だろうとかまわない。ともかく飛びこむのよ。走って、飛びこんで、そしてもっともっとその先まで走り続けるの。走っていれば、走り続けていれば見えてくるわ』
僕は何が見たいのだろう。何が見えると思っているのだろう。「火」の行方か、弓子か、それともどこかで現れるはずの「あいつ」の姿を確認したいのか、それとも……。
『君は走れる? 走り続けられる? 私より早くなんかじゃない。問題は君自身より早く走れるかどうかよ』
路地に走り込むと、あたりの風景が一変する。海岸沿いに一直線に延びている国道からひとつ角を曲がっただけで、黒い板塀とちっぽけな植えこみとひしゃげたような瓦屋根の続く町並みだった。小さな道が曲がりくねり、入り組み、僕は旧市街の入口で「火」の行方を一瞬のうちに見失ってしまう。
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06/02 18:15
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