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別の家の庭の入口
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外側から見れば入り組んだ路地と袋小路の連続みたいなこの旧市街も、中に入ればひとつにつながっている。つながっていると言ったって、全部他人の家の庭と軒先だった。
「俺たちが、まだ子どもだからさ」
オサムが僕を振り向いて、囁くように叫んだ。
「大人だったら、たちまちお巡りが吹っ飛んで来るぜ。もしまだ人手が余ってるんだったら」
僕たちは隣合った家々の庭と路地を、次から次へと縫い合わせるようにして走り続けた。まるで人の家の浴室の窓を割って侵入するみたいに。銀色のスプーンが僕たちを陽気な歌声で守ってくれている。道のルールはどこかで昼寝でもしているのだろうけど、これはみんな、僕たちが何とかすり抜けていかなくちゃいけないゲームなんだ。だいじょうぶだよ、ビッグ・ママ。僕は必ずやってみせるさ。
狭い旧国道に面した鰻屋の店の前を通り抜けると、突然、道が開けた。
旧市街を抜けたのだ。
僕たちは大通りに出た。ここからはまっすぐ駅に通じている。なぜか人も自動車も何もいない。町は、僕たちの前に、すっかり道を開けた。僕たちがこの町の蓋をこじ開けたのだ。
再び「火」の走る白い輝きがはるか前方に見えた。
遠ざかっていく「火」の速度は早い。真っ白な閃光の航跡を朝の大通りに描きながら追いつけない速度で走る「火」が、僕を導くように誘惑する。ほらほら、おいでおいでと誘う「火」を形どったポスターが商店街の閉じた入口から飛び去るのを、僕は追う。と、いつのまにか僕は戦場のまっただなかに立たされていて、誰かのうめき声を聞いている。
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06/02 18:20
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