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百燭の青電球
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その光りを反射して雪のように輝いている庭の茂みを見まわしていた。庭の隅々や、家の向う側に隠れている人の気配が感じられはしまいかと、眼を凝らし、耳を澄ましていた。しかし、そこいら中はひっそりかんとしていて、そんな気配はちっとも感じられなかった。
私は自分の家ながら、敵の住家を見るような気持ちがした。何かしら想像以上のものが……もしくは私の神経以上の敏感なものが待ち構えているようで、容易に門の中へ這入れなかった。況して窓の中を覗くのはこの上もない冒険で、白い光りの幕を背景にした私の影法師を、道沿いの電車の音に紛れて狙い撃ちにするのは訳ない事であった。
電車が二つばかり轟々と音を立てて私の背後の線路を横切った。ユーカリの枯葉が一二枚、暗の空から舞い落ちて微かな音を立てた。
その音を聞くと、急に私は自分の臆病さに気付いて可笑しくなった。
二十何年間の探偵生活に鍛え上げられた自分の神経を思い出しつつ人通りの絶えたのを幸いに抜き足さし足窓の所に近付いた。ちょうど窓の右手の処にこんもりした椿の樹が立っていて、暗の中に赤い花を着けている。その蔭に身を寄せて、窓の隅に映っている丸い影法師……それは卓上電話の頭であった……の中央にあるドローン・ウォークの編み目から内部を覗いた。
すぐに室の中の様子がすっかり変っているのに気が付いた。つい五六時間前に、少年嬢次と話をした時まで、樅の板壁に松天井、古机に破れ椅子というみすぼらしい書斎の面影は跡型もなくなっている。
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06/25 04:28
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